町の宝を住民が守る
なまこ壁の町並みが美しい松崎町は、かつて多くの観光客で賑わっていました。しかし近年は観光客の減少とともに地域経済が衰退し、住民の半数以上を高齢者が占めるなど、少子高齢化という大きな課題を抱えています。
こうした中、「蔵ら」の代表理事・青森千枝美氏は「高齢者の介護予防・予防医療を通じて、町を元気にしたい」という強い思いから、平成17年よりボランティアで「ものづくり介護」を開始。地元の高齢者とともに手芸品の制作・販売を行う工房を運営してきました。
転機となったのは平成22年、工房近くにあった築150年の古民家が取り壊しの危機に直面したことです。持ち主から活用の相談を受けた青森氏は、当時75歳という年齢から一度は躊躇したものの、「町を元気にしたい」という共通の志を持つ仲間たちの後押しを受け、古民家を拠点としたまちづくりに乗り出しました。
運営方法や資金調達の在り方を模索する中で、「共同出資・共同運営」というワーカーズ・コレクティブという形に辿り着きます。そして平成22年10月、地元に暮らす25人の主婦が出資し合い、「伊豆松崎であい村 蔵ら」を開店。さらに平成25年5月には、企業組合であい村 蔵らを正式に設立し、地域に根ざした持続可能な取り組みとして活動を続けています。
その後、2025年7月活動規模の見直しを行い、現在は個人事業として、継続してみんなで店舗運営を継続しています。
地域でお客様をおもてなしする
平均年齢75歳の主婦たちが元気に働いています。同組合が育てた無農薬野菜や、地元で採れた食材をふんだんに使ったお弁当を手作りし、店頭での販売はもちろん、地域の方々への配達も行っています。
また、座敷には地元の高齢者たちが丹精込めて作った小物や雑貨がずらりと並び、食事の合間にちょっとしたお買い物も楽しめます。これらの商品は、青森氏がボランティア時代に高齢者とともに培った「ものづくり」の経験を活かし、「売れるものをつくろう」という想いから生まれたものです。
「蔵ら」の評判は口コミで徐々に広がり、今では県内外から多くのお客様が訪れる人気店となりました。店内は常に賑わい、笑顔があふれています。
地域住民にとっての生きがい
蔵らを運営は働くスタッフ全員で相談しながら進めています。各自が日々3~4つの役割を担いながら、自分にしかできない特技を活かして活動しています。代表の青森千枝美氏は、「できる人がやればいいの。年齢なんて関係ない」と語ります。
給与は、毎月の売上から諸経費を差し引いたうえで、働いた時間に応じて均等に分配される仕組みです。これにより、高齢のスタッフも体調や家庭の事情に合わせて無理なく働くことができ、「自分のペースで社会とつながれる」場となっています。
この仕組みを「働くデイサービス」と呼び、主婦や高齢者が仕事を通じて新たな生きがいや役割を見出せる場所にしたいと考えています。
また、平成26年8月からは、地元の高齢者たちが自身の特技を教える教室も定期的に開催。手芸や料理、昔ながらの知恵などが、地域や訪れる人との新たな交流の場になっています。
今後も蔵らは、訪れる人、働く人、関わる人の心を動かし、勇気と元気を届ける場として、挑戦を続けていきます。

2025年7月 スタッフ一同
